研修会『赤ちゃんからの運動発達とスポーツ指導』報告

先日はお盆の週末にも関わらず、園や発達支援施設の先生たちが参加してくださり研修会を開催することができました。ありがとうございました。暑い中でしたが皆さま大変熱心に受講されていました。

内容をざっと振り返ると

まず、スポーツ・運動ができるとは?

これは、脚が速い、逆上がりができる、体力テストの成績が高いといったことから評価されているかなと。

逆にできない・成績が低ければ、運動ができない・苦手だと判断される。

これは運動ができる・できない、数字としても見える部分での評価です。

それと、わかりやすく数字で表現できないものもあります。

姿勢が悪い、座り方、しゃがめない

お箸や鉛筆の持ち方

食べ方、飲み方

走り方やボールの投げ方

転んだ時の体のつかい方、怪我のしかた

などなど

最近のこどもの体力運動能力や体の動きのおかしさについてなど、よくいわれていますし、こどもと関わる職種の先生たちは強く実感されているようでした。

では、運動ができる・できない、得意・苦手になるのは何が原因なのか?

体力運動能力低下や体のおかしさの原因はどこにあるのか?

これは小さい時からの体の動かし方、遊び方

時代の変化

ゲーム、スマホ

など様々なことが指摘されています。

もちろん小さなころから体をたくさん動かす、ゲームやスマホに時間を奪われない、友だちと遊ぶ、このようなことは当然大切です。毎日ゲームばかりしている子と外で遊びまわっている子とでは差があるでしょう。ですがそれは小中学生以降に出てくるはず。

運動習慣や運動量にそれほど差がない、ゲームやスマホなど触っていない幼児期にもすでに、運動が苦手・体を動かすのが不得意という子たちはいます。

なぜ運動が荷が得手になるのか?ということを考えていきますが

その前に、どうしたら運動ができるようになる・上手になるのか?ということも考えます。

そして運動ではなく算数を例にして考えてみましょう。

分数の計算や図形の体積の求め方ができるようになるには

整数や少数、分数の意味や図形の性質が理解できる

加減乗除の計算や順序の理解

図解の概念や量の概念、数の概念や表し方

これらを理解していることが必要です。

要は難しい計算や問題を解くには、その前段階の学習内容を理解していなければなりません。

複雑な分数や少数の計算の前に、分数や少数の概念や意味の学習が必要

かけ算割り算の組み合わさった問題の前に、かけ算の学習

かけ算の前に足し算・ひき算

足し算の前に数の概念の理解が必要

順番や段階があります。

かけ算が難しいようだったら、つまずいているところ、その前の段階の学習を丁寧にやり直す。

6年生の問題ができなかったら5年生の内容

それが難しかったら4年生、それが難しかったら3年生…2年生…1年生…

となりますよね。

ちなみに1年生の学習が理解できない、数や量、重さなどの概念が理解しづらいという問題は、乳幼児期の感覚や認識と体の動きの発達と関係します。

大事なのは、できなかったら前の段階に戻って学習する。

基礎的なものから始まり、難しいものもできるようになる。

ということです。運動の話に戻ります。

どうしたら運動ができるようになるのか?

逆上がりができない!!という時

・何度も繰り返し練習しよう!必ずできるようになる!

・最初からできる人はいない!あきらめずに挑戦!

・努力することに意味がある!継続は力なり!

とか言って練習させる人が日本にはけっこういらっしゃるようです。(悪いことではないですよ)

ちなみに鹿屋体育大学20期生の私は鉄棒は嫌いで、逆上がりができるようになったのは4年生か5年生の時だった記憶があります。

できるようになった時の気持ちは、これで鉄棒の授業の時にできなくて嫌な思いをしなくて済むな…的な感じだったと思います。うれしくもなんともないし、その後も鉄棒はずっと嫌いでしたね。

ちなみにちなみに10数年前に体操部の松井君に鉄棒や跳び箱を教えてもらって、そこそこできる&好きになりました。

逆上がりの話に戻ります。

逆上がりの運動の要素として

・つかまる

・腕、体を引き付ける

・脚を振り上げる

・回転する

などがあります。

これらの動きがなぜできないのか?苦手なのか?弱いのか?

・抱っこなどでぎゅっとしがみつく動きをしていましたか

・首座りはきちんとできていましたか

・顎を引いて体を丸めることができますか・屈筋がしっかりとつかえていますか

・赤ちゃんの時に足をバタバタする動きや足舐めの動きをしていましたか

・身体像や平衡感覚が育っていますか

このようなことが、乳幼児期の運動と関連するものとして挙げられます。

赤ちゃんの時に

頭を持ち上げて周りを見て、首がしっかりと座って

脚をバタバタして、足を持ったりなめたりして

ゴロゴロ寝返りをして

ハイハイで左右の手足をつかって

抱っこの時に手足でつかまって、身体の温かさや揺れを感じて…

これらのことが身体の発達、運動の発達につながり

逆上がりなどの様々な運動にもつながっていくのです。

逆上がりなどの運動は、運動の発達や体力運動能力の評価としても運動そのものも大切であると思います。

が、どうも逆上がりができる・できないということ自体を必要以上に気にしている指導が多いように感じます。

単純にできる・できないということが重要ではない、できるようにすることが目的ではないということを理解してほしいと思います。

逆上がりを構成する運動の要素は何なのか、必要な能力はどのようなものなのか

できない場合はどこにつまずきがあるのか、何が原因なのか、そしてそこを改善するためにどのように取り組めばよいのか

このような視点で考え取り組むことが大切です。

どうも運動の場合には、できない運動に対して、できるようになるまで努力することが大切・繰り返し練習することに意味がある、といったことを過度に称賛する傾向があるように思います。

そのほか乳幼児期の運動や姿勢と食べる・飲む動作との関わり、鉛筆やスプーンなどの道具の使い方と運動や手の発達についての話などをしました。

また、首すわりや寝返り、ズリバイの動きなどを実際にしながら説明をしていきました。

「ハイハイは大事ですよ」

・平衡感覚が鍛えられますよ

・体幹が鍛えられますよ

・視覚や認知が広がりますよ などなど

ハイハイなどの動きが大切だというのは、こどもと関わる職種の方や関心のある保護者の方だと聞いたことがある、目にしたことがあるのではないでしょうか。ネットで検索をしたりSNSを閲覧したりすればそのような動画など数多く出てきます。

ただ、大切なのはなんとなくわかる、よく聞くのだけれど、なぜ大切なのか、それがどのようにつながっていくのかまで理解していないと、見ただけ知っているだけで継続した実践になっていかないのではないかと感じています。

逆に、なぜ大切なのか、その運動にどのような効果があるのか、どんなことにつながるのかが理解できていると、日常の動きやちょっとした運動、抱っこや食事の姿勢などを大切にすることができると思います。

毎日のちょっとしたことの積み重ねが大切なのは大人もそうではありますが、成長著しいこども、赤ちゃんにとっては1か月2か月、1年2年で大変な変化があります。

乳幼児期の体の発達、心や体の育ちの大切さについては、専門職だけでなく、お父さんお母さんたちにも広く伝わるようにしていかねばと思いました。

今回の研修に来てくださったような勉強熱心な先生方の存在は本当にありがたいです。

写真はハイハイをがんばる参加者の皆さまとトンネルをくぐっているお子さま。実技短めで退屈だったかも。走り回っていてよかったんですが、1時間以上静かに講義を聞いていてくれました。

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